不妊治療のクリニックはどう選ぶ? 実績の見方と、転院を考えるタイミング

はじめに|「どこを選べばいいのか、分からない」
こんにちは。大田区・大森の「おおた鍼灸院 大森」院長・太田です。
当院で不妊治療のお手伝いをしていて、施術中にいちばん多くいただくご相談は、実は鍼灸のことではありません。「いま通っているクリニックで、このまま続けていいのでしょうか」——これです。
「クリニックがたくさんありすぎて、何を基準に選べばいいのか分からない…」
「1年通っているけれど、成果が出ない。変えたほうがいいの…?」
「転院したいけれど、今の先生に言い出しづらい…」
この記事では、クリニックを見るときにどこを確認すればよいのかを、鍼灸師の立場からお伝えします。私は医師ではありませんので、治療方針を判断することはできません。ですが、これまで多くの方の通院に伴走してきた中で、「後から効いてくる見方」は分かってきました。そこをお話しします。
なお、大森・蒲田・品川など近隣にどんなクリニックがあるかについては、「大森近辺の不妊治療クリニック」で施設名を挙げてご紹介しています。この記事では施設ごとの評価はいたしません。選ぶときの「ものの見方」に絞ってお伝えします。
📋 この記事の目次
- はじめに|「どこを選べばいいのか、分からない」
- 通いやすさで選ぶ——それも間違いではありません
- 実績の見方——数字は「分母」で変わります
- 見落とされがちな「培養室」と胚培養士
- 婦人科と、不妊治療の専門クリニックの違い
- 担当医が毎回変わる、ということ
- 転院を考えていい、タイミング
- 転院には、失うものもあります
- 「転院したい」と言い出しにくいとき
- 当院がしていること
- 当院に通われた方のお話
- よくある質問
- Q. どのクリニックがいいか、教えてもらえますか?
- Q. 何回うまくいかなかったら、転院を考えるべきですか?
- Q. 凍結してある胚があります。転院できますか?
- Q. 転院すると、保険や助成の回数はどうなりますか?
- さいごに|納得して進んでいるか、が軸です
通いやすさで選ぶ——それも間違いではありません

まず、通いやすさを大切にするのは正しい判断です。不妊治療は、思っている以上に通院の回数が多い治療です。とくに体外受精の周期に入ると、数日おきの来院が必要になることもあります。仕事を続けながら通うのであれば、職場や自宅からの距離、朝や夕方の診療時間は、無視できない条件です。
実際、私も「まず続けられることが大事です」とお伝えしています。通えないクリニックは、どんなに評判が良くても、その方にとっては良いクリニックではありません。
ただ、ここに落とし穴があります。通いやすさだけで選んだ場合、うまくいかなくなったときに「次の手」が見えなくなるのです。近いから選んだ、というだけでは、そこが自分に合っているのかを判断する材料がありません。
ですから、通いやすさは「絞ったあとの最後の条件」にしていただきたいのです。先に見ておきたいことが、いくつかあります。
実績の見方——数字は「分母」で変わります

クリニックのサイトには、しばしば妊娠率が載っています。ここでいちばん申し上げたいのは、数字そのものより、その数字が「何を分母にしているか」を見てほしいということです。
同じ「妊娠率」という言葉でも、中身はまったく違います。
- 移植1回あたりの率なのか(胚を戻した回数が分母)
- 採卵1回あたりの率なのか(採卵まで進んだ回数が分母)
- 患者ひとりあたりなのか(何回かかっても最終的に授かった人の割合)
- その施設に通う方の年齢の構成はどうか
年齢は特に大きく影響します。若い方が多く通う施設と、難しいケースを引き受けている施設では、同じ努力をしていても数字は違って出ます。数字が低いから力がない、とは限らないのです。逆もまた然りです。
見ていただきたいのは、順位ではなく「開示の姿勢」です。分母を明記して数字を出している施設は、それだけ自分たちの治療を検証しているということです。逆に、良い数字だけが大きく載っていて、条件がどこにも書かれていない場合は、少し慎重に読んでください。
見落とされがちな「培養室」と胚培養士

ここは、あまり語られないところです。私が転院のご相談を受けたとき、必ずお伝えしていることです。
体外受精や顕微授精では、採卵したあとの卵と精子を扱うのは、医師ではなく胚培養士(エンブリオロジスト)です。受精させ、育て、グレードを見て、凍結し、融解する。この一連の作業を担っているのが培養室です。
つまり、採卵までは医師の腕、そこからは培養室の仕事という側面があります。同じ卵でも、培養の環境や技術によって育ち方が変わり得る——それが体外受精という治療の構造です。ところが患者さんの側からは、この部分がほとんど見えません。診察室で会うのは医師だけですから、当然です。
見学できる施設は限られますが、次のようなことは調べたり、聞いたりできます。
- 培養室や胚培養士について、サイトで紹介しているか(人数・体制・資格)
- 受精や培養の方法について、説明の場があるか
- 胚のグレードや培養の経過を、写真や記録で見せてもらえるか
「培養室のことを伺ってもいいですか」と尋ねて嫌な顔をされることは、まずありません。むしろ、そこを大切にしている施設ほど、喜んで説明してくれます。
婦人科と、不妊治療の専門クリニックの違い
もうひとつ、混ざりやすいところです。近所の婦人科・レディースクリニックと、不妊治療を専門にしている施設は、できることの範囲が違います。
タイミング法や人工授精までは、多くの婦人科で受けられます。ですが体外受精・顕微授精には、培養室という設備と、専門のスタッフが必要です。ですから、いま通っているところで体外受精まで進めるのかどうかは、早い段階で確認しておいたほうがよいことのひとつです。
「そのときに紹介してもらえばいい」と思われるかもしれません。それも一つの道です。ただ、先に進む可能性を見越して選んでおくと、その時期に検査をやり直す手間が省けることがあります。
担当医が毎回変わる、ということ
大きな施設では、診察のたびに担当の医師が変わることがあります。これは仕組みの問題で、悪いことだとは言えません。夜間や休日にも対応できる体制の裏返しでもあります。
ただ、当院に来られる方からよく伺うのは、「毎回先生が違うので、悩みを打ち明けられない」という声です。前回の話を覚えていてもらえない。同じ説明を毎回しなければならない。それが積み重なると、聞きたいことを聞かないまま次の周期に入ってしまいます。
ですから、ご自身がどちらを大事にする人なのかを、先に決めておいてください。体制の厚さを取るのか、同じ人に続けて見てもらうことを取るのか。どちらが正しいということはありません。ただ、あとで「こんなはずでは」となりやすいのが、ここです。
なお、担当が変わる施設でも、指名ができる場合があります。受付で尋ねてみる価値はあります。
転院を考えていい、タイミング

「変えたほうがいいのでしょうか」と聞かれたとき、私は数字ではなく、次のようなところを一緒に確認します。
- 同じ方法を、説明なく繰り返している(前回と何を変えたのかが分からない)
- 次の見通しを聞いても、答えが返ってこない(あと何回この方針で行くのか)
- 質問ができない・しづらい(時間がない、雰囲気がない)
- いま通っている施設では、次の段階に進めない(体外受精の設備がない等)
- 通うこと自体がつらくなっている
逆に、結果が出ていないという事実だけでは、転院の理由になりません。不妊治療は、良い施設で正しく進めていても時間がかかることがあります。「うまくいっていない=変えるべき」ではないのです。
見ていただきたいのは結果ではなく、「次に何をするかが、説明されているか」です。そこが説明されている限り、その施設は考えて進めています。
転院には、失うものもあります
ここは正直にお伝えしておきます。転院は、いいことばかりではありません。
- 検査をやり直すことがある——費用も時間もかかります。紹介状や検査結果を持参できるか、事前に確認してください
- 凍結してある胚の移送——できる場合とできない場合があり、費用も発生します。凍結胚がある方は、これを先に確認してください
- 制度上の回数の扱い——保険や助成の回数の数え方は制度によって決まっており、変更されることもあります。思い込みで判断せず、必ず窓口で確認してください
- 通院距離が伸びる——最初にお伝えしたとおり、通えなければ続きません
- 一からの関係づくり——また同じ説明をすることになります
そして何より、転院すれば結果が出る、というものではありません。変えてよかった方がいる一方で、変えずに授かった方も、たくさんいらっしゃいます。転院は選択肢のひとつであって、正解ではないのです。
それでも動くかどうか。そこはご夫婦で話し合って決めることです。納得して進んでいるかどうか——判断の軸は、そこだと思います。
「転院したい」と言い出しにくいとき
気を遣って言い出せない、という方がとても多いです。ですが、これはごく普通に行われていることです。医療機関の側も慣れています。
言いにくければ、理由を細かく説明する必要はありません。「セカンドオピニオンを受けたいので、紹介状と検査結果をいただけますか」——これで十分です。角も立ちません。実際にセカンドオピニオンを聞いてから決める、というのは、まったく正当な進め方です。
当院がしていること
当院では、ご相談をいただいた方に、近隣の不妊治療クリニックの情報をお渡しすることがあります。長く不妊治療のお手伝いをしてきた中で、通われた方から実際に伺ってきた話が積み上がっているためです。
ただし、ここに順位をつけて公開することはしません。合う・合わないは、その方の年齢、これまでの経過、通える範囲、大事にしたいことによって変わります。一律に「ここが良い」と言えるものではないからです。
そのうえで、私は診断も治療方針の判断もできません。できるのは、ここまでにお伝えしたような見方を一緒に確認して、次の診察で何を聞くかを整理することです。決めるのはご本人とご夫婦、そして主治医です。
体の側からできることについては、採卵に向けては「採卵前にできることはある? 卵が育つ120日の過ごし方と体づくり」、移植がうまくいかないときは「着床しないのはなぜ? 良好胚でも着床しない原因不明不妊と、体の側からできること」で詳しくお話ししています。ご主人の側にできることは「精子は約74日で入れ替わります|男性側にできる2か月の体づくり」にまとめてあります。
当院に通われた方のお話
クリニック選びについて、Googleのクチコミに寄せてくださった方のお話です。ご本人が書かれた文章を、そのまま掲載します。
不妊治療で半年程病院に通っていましたが、知り合いが同じく不妊治療で鍼を行い妊娠したという話を聞き行ってみる事にしました。
実際にお話を伺ってみるととても丁寧に説明して下さり、また、不妊治療にお詳しく、AMHの低さで悩んでいた私に4ヶ月は見て欲しい、と具体的な時間を示して頂いたのも大きく、通ってみる事にしました。
当初は通勤途中で通いやすいという理由でクリニックを選んでいましたが、先生から不妊治療に関する知識や病院のリストを送って頂き、実績が何より大事なんだと気付かされました。
そこで夫婦で改めて話し合い転院をし、結果1回目の体外受精で妊娠する事が出来ました。
知り合いに鍼を勧められていなかったら、転院していなかったら、私はまだ不妊治療を続けていたと思います。。
不妊治療はいつ結果が出るか分からず、常にこれで良いのか?ともやもやしながらクリニックに通っていた私にとって、先生はいつも優しく寄り添って頂きながらアドバイス頂き精神面でもとても救われました。
太田先生と共に妊娠に向かって進んでいる感じが心強かったです。
不妊で悩んでいる方にはとてもおすすめの鍼灸院です。
— Googleクチコミより(体外受精でご来院の方)
もう一件、婦人科から専門クリニックへ移られた方のお声です。
不妊治療に特化した鍼灸院を探しており、訪問しました。
初回から丁寧に優しく話を聞いて下さり、どのような効果があるのか論理的に説明を受けたため、安心してお任せする事が出来ました。
当初は近所のレディースクリニックに通っていましたが、不妊治療専門のクリニックとの違いやお勧めのクリニックをすぐに教えて下さり、転院しステップアップ、1度目の体外受精で授かることが出来ました。こちらに通っていなければ、現在も状況は変わっていなかったのではないかと思います。
治療の際には日々の悩みや不安な事も親身になって聞いて下さり、ゴールの見えない不妊治療の中で心の支えになっていました。本当に感謝しています。
現在は転居し遠方になってしまいましたが、遠くからでも是非通いたいと思うお勧めの鍼灸院です。
— Googleクチコミより(婦人科から専門クリニックへ転院された方)
※どちらもGoogleクチコミに投稿いただいた原文をそのまま掲載しています。おふたりは転院をご自身とご夫婦で判断され、クリニックでの治療によって結果に至られています。転院すれば結果が出るというものではなく、転院せずに授かる方も多くいらっしゃいます。経過は人によって異なり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。
よくある質問
Q. どのクリニックがいいか、教えてもらえますか?
順位をつけてお答えすることはできません。合う施設は、年齢・これまでの経過・通える範囲・何を大事にしたいかによって変わります。そのうえで、近隣にどんな施設があるかという情報と、この記事でお伝えしたような見方は、ご相談の中でお伝えしています。
Q. 何回うまくいかなかったら、転院を考えるべきですか?
回数で決まるものではありません。判断の材料は「次に何をするかが説明されているか」です。同じ方法を説明なく繰り返しているなら、その点をまず主治医に確認してください。それでも見通しが得られないときが、考えるタイミングだと思います。
Q. 凍結してある胚があります。転院できますか?
施設によって、移送できる場合とできない場合があり、費用も発生します。凍結胚がある方は、これを最初に確認してください。移送が難しい場合は、その胚を使い終えてから移る、という順序も選択肢になります。
Q. 転院すると、保険や助成の回数はどうなりますか?
制度によって数え方が決まっており、内容が変わることもあります。ネットの情報や人から聞いた話で判断せず、必ずクリニックの窓口やお住まいの自治体で確認してください。ここを誤解したまま動くと、あとで困ることがあります。
さいごに|納得して進んでいるか、が軸です
クリニック選びに、絶対の正解はありません。同じ施設が、ある方には合い、別の方には合わないこともあります。
ですから、私がいちばんお伝えしたいのはこれです。いま自分は、納得して進んでいるだろうか。方針を説明され、質問ができて、次に何をするかが分かっている——それがあるなら、その場所で続ける意味があります。どれかが欠けていると感じるなら、まずそれを主治医に聞いてみることから始めてください。聞いた結果で、動くか続けるかを決めればよいのです。
そして、一人で抱え込まないこと。ご夫婦で話し、主治医に聞き、必要なら第三者の意見を聞く。当院も、そのうちの一つになれればと思っています。「これで良いのだろうか」という迷いごと、施術のベッドの上で話してください。
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